ジルコニアだと料理がおいしい『科学的な』理由
「素材がジルコニアなので、いっさい料理の味を邪魔しません。」
二つの理由が考えられます。一つは、ジルコニアであれば、金属と違って料理の味を変えないという事であり、
もう一つは、繊細な風味が金属臭さによって埋もれてしまう事がないということです。
まず一つ目の料理の味を変えないという事について説明します。料理には「良い塩梅」という言葉があります。
これは塩の加減によって、うま味の感じ方が変わるという事です。味には5つの基本味があり、それらは、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味です※1。その中の一つである うま味 は、アミノ酸の味です。アミノ酸は単体では味がなく、微量の金属イオンと混ぜ合わさる事で味が感じられるようになります。なので、塩を加える事により金属であるナトリウムを加えて、料理を引き立てる事ができるわけです(栗原堅三、うま味って何だろう、岩波ジュニア新書2012/1/21)。うま味調味料協会によれば、塩分濃度0.4%から0.8%が適量です。私たちは料理が、料理人の狙った塩梅を保ったまま、食べる人の舌の上まで運ばれる事が大切だと考えています。
続いて二つ目の金属臭さについて説明します。金属臭さは、実は金属そのものの匂いではなく、金属イオンによって分解された皮脂などの匂いです(金属の匂いの正体は?;金属臭は実は体から!※2)。金属には強い酸化作用があります。特に、銀、銅、鉄(ステンレス)は酸化力が強いです。この分解のメカニズムは、転移金属イオンによる酸化反応によるものですので、あらゆる有機物に当てはまります。よって、料理に含まれる脂質なども分解され、金属臭さの原因になっていると、私たちは考えます。ジルコニアはイオン化しませんので、風味を分解して、金属臭に変えてしまう事はありません。
参考文献
※1 (うま味調味料協会)・・・・
※2 ( ScienceDaily )・・・・・・
ジルコニアとは
ジルコニアは天然由来の鉱物からできています。ジルコニアの特徴をご説明いたします。
「宝石の様な、硬さ」
「ジルコニアって金属ですか?」と聞かれることが多々あります。私達は「磁器の一種です。」と答えます。
このページで少し詳しくご説明いたしますが、少々難解かもしれません。お付き合いください。
金属には電流が流れます。電流は電子が動くから流れるので、電気が通る物の殆どは、その塊の周りで電子が動き回っています。電子が動き回っているのは、金属が電子を手放そうとしているからです。しかし、電子を手放すと、プラスに電荷を帯びてしまうので、磁石の同じ極が反発し合うように、金属の原子同士は反発し合っています。では、どうして金属が塊でいられるかというと、周りを回る電子が、縄の様な役割をして縛り上げているからです。これを金属結合と言います。金属の塊に物がぶつかると、金属の原子同士は、簡単に位置を変えます。要は、変形します。もともと金属の原子同士は結合しておらず、周りに回っている電子に縛られていただけなので、位置を変えても、それなりにまた電子が周りを回り続け、全体としてバラバラになりません。
金属結合というのは、化学結合の中で最も弱い結合です。磁器や宝石などは、たいてい電気が通りません。電子が固定されているからです。例えばサファイヤは、アルミニウムと酸素で出来ているのですが、アルミニウムが電子を差し出してプラスに電荷を帯び、酸素がその電子を受け取りマイナスに電荷を帯びるので、磁石のSとNがくっつくように、お互いに強く結びつき合っています。これをイオン結合と言います。金属結合よりも遥かに強く結合しているので、磁器や宝石などは、金属よりも硬くなります。ジルコニアは、ジルコニウムという金属と酸素が結合した磁器です。
「金属の様な、しなやかさ」
ジルコニアという言葉を聞いたことのある方の多くは、おそらく『キュービック・ジルコニア』としてご存じなのではないかと思います。「ジルコニアって模造ダイヤ?透明じゃないの?」と思われるかもしれません。
ZIKICOで使っているジルコニアは、それとはちょっと違います。キュービック・ジルコニアのキュービックは結晶の名前で、その結晶の形はキュービック(立方体)になっています。たった一つの結晶で構成されるように、時間をかけて育てて作るので、水晶のように透明になります。それに対してZIKICOが使っているジルコニアは、2種類のとても小さな結晶の集合でできています。(部分安定化ジルコニアと言います。)細かい結晶がたくさん詰まっているので、光がランダムに屈折して白く見えるのです。どれくらい小さいかというと、髪の毛の太さの二百分の一程度の約0.3μmです。結晶の名前は、テトラゴナル(正方晶)とモノクリニック(単斜晶)。結晶は形によって体積が違います。ジルコニアの原材料に、別の鉱物を微量に加え、どのくらいの割合で混ぜるかということと、どれくらいの時間をかけて焼き固めるかということで、結晶の種類と大きさが変わります。焼き固めた後に体積の違う2種類の結晶(正方晶と単斜晶)を残しておくことによって、ジルコニアがしなることができるようになり、金属の様なしなやかさを持たせることができるのです。
「磁器の様な、ノンアレルゲン」
金属同士のつながりは弱く、いつも電子を渡す相手を探しています。電子を受け取る相手が外から引っ張ると、金属は電子を受け渡しイオン化して、直ぐに抜け出てしまいます。それが人のタンパク質と反応すると、タンパク質をアレルゲンに変え、金属アレルギーの原因にします。金属の表面に酸化膜があっても、お皿などと擦れて削れると、金属面が露出します。しかし、中に電子を欲しがっている酸素を構造に持ち、磁器になっていると、結びつきが強くなり安定します。特に酸素はイオン化エネルギーが低いので、一度結び付くと、他の元素と入れ替わる事はありません。ジルコニアは、ジルコニウムという金属と酸素が結び付いてできた磁器なので、溶出するものがありません。
「ジルコニアの色」
白い商品だけではなく、黒い商品なども販売していると、元々のジルコニアの色について聞かれることがあります。元々のジルコニアの色は、少し光が透ける白です。黒などの他の色のものは、他の鉱物を混ぜ込むことで作られています。
よく知られている鉱物、例えば宝石でいうと、ルビーは赤く、サファイヤは青いのですが、実はどちらも同じコランダム(アルミナ)という鉱物の結晶です。アルミナの色も元々は白なのですが、クロムが混じると赤くなりルビーと呼ばれ、鉄とチタンが混じると青くなりサファイヤと呼ばれます。しかし、同じ鉱物を混ぜても、アルミナとジルコニアでは同じ色になりません。例えばクロムをジルコニアに混ぜても赤くならず、緑色になります。エメラルドにも、当たる光によって赤か緑に色を変えるアレキサンドライトにもクロムが含まれています。一方でダイヤモンドなどのように、元々色のないものは、時が経っても後から色がつく事はありません。ジルコニアの色も、後から変わる事はありません。万が一、黄ばみなどが見られた際には、メラミンスポンジなどできれいにすることができます。
陶磁器に使われる釉薬、日本画に使われる顔料も、同じように鉱物から作られています。普通の絵の具には、植物や石油などから作られる有機物の顔料もありますが、それらとは違い鉱物から作られた色は、時がたっても褪せる事がありません。ジルコニア製品は、酸やアルカリ、洗剤や漂白剤につけても、あるいは乾燥機などに入れても、更には長年にわたり油、香辛料、皮脂などに触れていても色が変わる事はありません。